「ゴルフは仕事に似ている」という言葉を聞くたびに、以前は半笑いで流していた。始めた当初はただのレジャーだと思っていたからだ。しかし脳外科医として10年間独学でゴルフを続け、昨年からオンラインレッスンに通い始めて初めてわかった——ゴルフと手術室は、驚くほど同じ構造をしている。
この記事では、僕が感じたゴルフと外科医・ビジネスの「意外な共通点」を7つ紹介する。ゴルフを始めようか迷っている医師・会社員の方にも、何かヒントになれば嬉しい。
①「準備8割」は手術もゴルフも同じ
脳血管外科の手術は、メスを入れる前に全体の80%が決まっていると言っても過言ではない。術前の画像読影・シミュレーション・チームブリーフィング・器材の確認——この準備が万全なら、手術は「予定通り」に進む。
ゴルフも全く同じだ。ティーショット前のコース戦略・風向き・ライの確認・クラブ選択——この5分間の準備がスコアを決める。ショットそのものより、ショット前の意思決定プロセスの方がはるかに重要だ。
どちらも「ぶっつけ本番」が最も危険。慌てて打ったショットは、慌てて始めた手術と同じ結果になる。
②「ミスした後の一打」が実力を決める
手術中にアクシデントが起きたとき——予期しない出血、クリップの位置のズレ——その瞬間の「次の判断」が患者の予後を変える。パニックになる外科医は2流だ。
ゴルフでOBを打った後に、焦って次のティーショットを曲げる人と、冷静にリカバリーショットを刻む人——スコアカードを見れば一目瞭然だ。ゴルフの上手い人はミスの後の「次の一手」が上手い。
どちらのスキルも、日常の反復の中でしか鍛えられない。
③「型」を習得してから応用する
外科医のトレーニングは「型の習得」から始まる。縫合の基本・結紮の手順・止血の技術——これを体が覚えるまで反復する。型が身についてから、初めて応用(難症例への対応)ができる。
ゴルフも同じだ。3年間の独学で「なんとなく打てる」ようになっていた僕が、レッスンでグリップ・アドレス・テークバックの「型」を修正された途端、スコアが7打も改善した。
「型破り」は「型あり」からしか生まれない。YouTubeで色々見て「感覚」で覚えようとするのは、医学書を読まずに独学で手術しようとするのと同じリスクがある。
④「マネジメント」こそが最大の差別化
手術室では、若い頃は「技術」で差がつくが、キャリアが上がるにつれて「マネジメント」で差がつく。チームへの指示の明確さ・手術時間のコントロール・後進指導の手法——これが上級外科医の本質だ。
ゴルフにおける「コースマネジメント」はまさにこれだ。「飛ばす」のではなく「置く」——ピンではなく次打の位置に打つ思考法。ドライバーで300ヤード飛ばすより、苦手なバンカーを避けてフェアウェイキープする選択がスコアを改善する。
これは投資にも通じる。高リターンを狙う「攻め」より、リスクを避ける「守り」の意識が長期的な資産形成を安定させる。
⑤「フィードバックループ」の速さが上達を決める
外科医は手術結果から即座にフィードバックを得る。「このアプローチは術後経過が良かった」「このクリッピングは圧がかかりすぎた」——結果から学ぶサイクルが経験を積ませる。
ゴルフは打った瞬間にフィードバックが来る。スライス・フック・ダフリ——結果が即座に見える。問題は「なぜそうなったか」を分析できるかどうかだ。
ラウンド後にスコアカードを見て終わりにするのは「手術動画を撮ったけど見ない」のと同じ。ショットごとのメモや、スウィング動画の撮影・振り返りが上達を加速させる。
⑥メンタルコントロールが9割
脳外科の手術中は「怖い」という感情は許されない——正確には、感情を感じながらも行動には影響させないスキルが要求される。これをメンタル医学では「感情の脱フュージョン」と呼ぶ。
ゴルフでも全く同じだ。17番でOBを打ったとき、18番ホールにそのプレッシャーを持ち込まないメンタルが必要。プロゴルファーとアマチュアの差は技術より「直前ミスを引きずらない能力」の差が大きいという研究もある。
深呼吸・ルーティン確立・「現在のショットにだけ集中する」マインドセット——これは手術室で培ったものがゴルフにそのまま転用できた。
⑦「長期視点」があるかどうか
外科医としてのキャリアは、1回の手術ではなく10年・20年のトラックレコードで評価される。個々の手術結果ではなく、「この先生に頼んで良かった」という信頼の積み重ねだ。
ゴルフのハンディキャップも、1回のラウンドではなく累積スコアで決まる。1日のコンディションに一喜一憂せず、半年・1年単位でのスコア改善を楽しむ長期視点がゴルフを続けるコツだ。
これは投資と全く同じ構造だ。日々の株価に振り回されず、10〜20年後のポートフォリオに目を向ける——その思考習慣が、ゴルフでも仕事でも資産形成でも、結果を出す人の共通点だと感じている。
当直明けのゴルフが「最高にうまくいく」理由
ここからは完全に個人的な経験談だ。
不思議なことに、32時間当直明けのゴルフがベストスコアに近いことが極稀にある。最初は偶然だと思っていたが、パターンとして気づいた。
仮説:疲労で前頭前野が「余計なことを考える余力」を失い、本能的・感覚的なスイングに集中できる。「考えすぎない」状態がゴルフでは有効に働くことがある。フロー状態(ゾーン)に近い感覚だ。
もちろん集中力は落ちているし、体力的には万全ではない。でも「考えすぎないショット」が出やすい状態というのは確かにある——という話をゴルフ仲間にすると、「わかる!」と言う人が多い。
まとめ:ゴルフと仕事に共通する思考法を日常に活かそう
ゴルフと仕事の共通点をまとめると:
- 準備の質がパフォーマンスの8割を決める
- ミスの後の「次の一手」が実力の差になる
- 型を身につけてから応用する
- 「技術」より「マネジメント」が上級者の差別化
- フィードバックループを速くする
- メンタルコントロールが9割
- 長期視点を持つ
「ゴルフなんて時間の無駄」と言う人もいる。でも僕はゴルフから、手術・投資・仕事に通じる思考法を学んだと感じている。18Hのラウンドは、4時間の自己観察と意思決定の訓練だ。
医師・ビジネスパーソンとしてゴルフを始めてみたい方は、まずクラブ選びから。医師が使うゴルフクラブ選び完全ガイドも参考にどうぞ。


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