不動産投資入門|医師が不動産を選ぶべき理由とリスク管理の基本

資産形成

「医師は不動産投資に向いている」とよく言われます。高収入・安定した職業・社会的信用が高いため、融資が通りやすいからです。しかし脳外科医の私が現場で見てきた現実は少し違います。医師が不動産投資で失敗するパターンと、MBAで学ぶ「DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)」を使った正しい物件評価方法を解説します。

医師が不動産投資を選ぶ3つの理由

  • 融資レバレッジ:医師免許=安定収入の証明として、金融機関から低金利・高融資額を引き出しやすい
  • 節税効果:不動産所得は給与所得と損益通算が可能。減価償却費を活用した節税スキームがある
  • インフレヘッジ:インフレ時に不動産の実物資産価値・賃料が上昇するため、現金保有より有利になることがある

DCF法で物件の「本当の価値」を計算する

MBAのコーポレートファイナンスで最重要な企業価値評価手法が「DCF法(Discounted Cash Flow)」です。将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて物件の内在価値を計算します。

DCF法の基本式:物件価値 = Σ(各年のキャッシュフロー ÷ (1+割引率)ⁿ)+ 売却価値の現在価値

具体例で考えましょう。

前提条件数値
物件価格3,000万円
表面利回り6%(年間賃料180万円)
諸経費(管理費・修繕費・固定資産税等)賃料の20%(年間36万円)
純収益(NOI)年間144万円
割引率(=期待利回り)5%
保有期間10年
10年後の売却想定価格2,500万円

このDCF計算では、物件の現在価値は約2,700万円になります。3,000万円での購入は「割高」と判断できます。表面利回りだけで飛びつくと損をする典型例です。

医師が陥りやすい不動産投資の失敗パターン

失敗①:「節税目的」で購入する

「新築区分マンションで節税できます」という営業トークに騙されるパターンです。確かに初年度は減価償却で節税できますが、4〜5年後からは節税効果がなくなり、その後は赤字物件として残ることが多いです。節税は結果であって目的にしてはいけません。

失敗②:表面利回りだけで判断する

「利回り8%!」という広告に飛びつくのは危険です。管理費・修繕積立金・固定資産税・空室損失・ローン金利を引いた実質利回り(NOI利回り)を計算すると、実は2〜3%台というケースが多いです。

失敗③:人口減少エリアで購入する

地方の高利回り物件は人口減少による空室リスクが高い。DCF計算に「空室率の上昇」を織り込むと、10年後の価値は大きく下がります。原則として東京・大阪・名古屋・福岡などの大都市圏に絞ることが重要です。

医師が不動産投資を始める前のチェックリスト

  • 生活防衛資金(月収×6ヶ月分)を確保しているか
  • 新NISA・iDeCoをフル活用しているか(まず金融資産が優先)
  • 実質利回り(NOI利回り)で3.5%以上になる物件か
  • 人口増加エリア・駅近・築20年以内などの立地・物件条件を満たすか
  • 信頼できる管理会社・税理士を確保しているか
  • 最悪の場合(空室・修繕費)のシナリオでもローン返済できるか

まとめ:不動産は「融資が通ること」と「良い物件」は別

医師は融資が通りやすいがゆえに、営業マンのターゲットになりやすいという側面があります。「融資が出る ≠ 良い投資」という原則を忘れないでください。

不動産投資はDCF法・実質利回り・人口動態などのデータを冷静に分析した上で判断する。MBAで学んだコーポレートファイナンスの思考が、不動産投資でも確実に役立ちます。焦らず、1棟目を慎重に選ぶことが最も重要です。

参考文献:Damodaran A. “Investment Valuation: Tools and Techniques for Determining the Value of Any Asset.” Wiley Finance. 2012.

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