「老後、投資信託をどうやって使えばいいのか?」——積み立てを始めた医師から、この質問を受けることが増えてきた。NISAやiDeCoで資産を育てることへの関心は高まった。しかし「どう取り崩すか」はまだほとんど語られていない。
結論から言う。4%定率取り崩しでいい。それだけだ。
📋 この記事でわかること
- 投資信託の出口戦略として「4%定率取り崩し」が最適解な理由
- 4%ルールとは何か・根拠となる研究
- オルカンでも4%ルールは機能するのか
- 医師として引退後の取り崩しをどう設計するか
- 「自分に必要な資産額」を逆算する考え方
4%ルールとは何か
4%ルールとは、「保有資産の4%を毎年取り崩しても、30年間資産が枯渇しない」という経験則だ。1994年にアメリカのファイナンシャルプランナー、ウィリアム・ベンゲンが発表した研究が起源で、その後「トリニティ・スタディ」(1998年)でより詳細に検証された。
トリニティ・スタディでは、株式50〜75%・債券25〜50%のポートフォリオで4%を毎年取り崩した場合、30年後に資産が残っている確率(成功率)は約95%以上という結果が出ている。
具体例で見る4%ルール
| 保有資産 | 年間取り崩し額(4%) | 月々の取り崩し額 |
|---|---|---|
| 5,000万円 | 200万円 | 約16.7万円 |
| 1億円 | 400万円 | 約33.3万円 |
| 1.5億円 | 600万円 | 約50万円 |
| 2億円 | 800万円 | 約66.7万円 |
「月30万円の生活費が必要なら9,000万円の資産を用意すればいい」という逆算が成り立つ。これが資産形成の目標設定を劇的にシンプルにしてくれる。
「でもベースは米国株でしょ?」——オルカンでも問題ない
4%ルールの研究は米国株(S&P500)を前提としている。「オルカン(全世界株式)だと成立しないのでは?」という疑問は正当だ。
結論:オルカンでも実用上は問題ない。理由は以下の通りだ。
- オルカンの約65%は米国株で構成されている。米国株の影響を強く受けるため、長期リターンはS&P500と大きく乖離しない。
- 4%ルールはあくまで経験則であり、「3.5%で運用すれば成功率99%超」というデータもある。オルカンなら3.5〜4%の範囲で安全域をとれば十分だ。
- 日本の場合は年金収入が上乗せされる。年金で生活費の一部をカバーできる分、取り崩し率を4%より低く抑えられる=さらに安全マージンが増える。
いつ取り崩す?——お金が必要になったときでいい
「取り崩しはいつ始めるべきか?」という質問も多い。難しく考える必要はない。お金が必要になったときに、必要な分だけ取り崩せばいい。
医師のリタイア後の収入源は複数ある。
- 公的年金(厚生年金・国民年金)
- iDeCoの受取(60〜75歳の任意のタイミング)
- 非常勤・健診バイトなどの副収入(体力が続く限り)
- 不動産収入(保有している場合)
- 投資信託・ETFの取り崩し(NISA・特定口座)
これらを合わせて生活費を賄い、不足する分をオルカンから取り崩す——この設計が最もシンプルで持続可能だ。
📌 取り崩しの設計イメージ(例:月50万円必要な医師)
- 年金収入:月20万円
- 非常勤・バイト:月10万円
- 不足分(月20万円)をオルカンから取り崩す
- → 必要な資産額:20万円 × 12ヶ月 ÷ 4% = 6,000万円
「4%になるように」資産形成を逆算する
4%ルールがわかると、資産形成の目標がシンプルになる。
必要な投資資産額 = 年間取り崩し希望額 ÷ 4%(= 希望額 × 25)
例えば年間300万円をオルカンから取り崩したいなら:300万円 × 25 = 7,500万円が目標資産額になる。
この「目標から逆算する」思考が、積立額・期間・リスク許容度の設定をすべて整理してくれる。
次回予告:自分はいくら貰えて、いくら必要なのか?
「4%ルールはわかった。でも自分の場合、年金はいくら貰えるのか?老後の生活費はいくらかかるのか?」——ここを具体的に計算しないと、目標資産額が決まらない。
次回は「医師の年金受給額のリアル」「老後の生活費シミュレーション」「逆算した資産形成プラン」を、勤務医・開業医それぞれの視点で解説する。
📖 次回記事:医師の年金はいくら?老後の生活費はいくらかかる?【シミュレーション付き】
まとめ:投資信託の出口戦略は4%定率取り崩しが最適解
- 出口戦略は「4%定率取り崩し」でシンプルに解決できる
- 4%ルールはオルカンでも実用上は問題ない(不安なら3.5%で設計)
- 取り崩すタイミングは「お金が必要になったとき」——年金・副収入と組み合わせて不足分だけ取り崩す
- 目標資産額 = 年間取り崩し希望額 × 25で逆算できる
「自分の目標資産額はいくらか?」「今の積立額で間に合うか?」を一度プロと一緒に整理しておくことで、資産形成の解像度が大きく上がる。


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