医師の確定申告は「複雑で面倒」というイメージが先行するが、正しく取り組めば大きな節税効果が得られる。勤務医でも開業医でも、確定申告は「合法的な節税の最大の機会」だ。本記事では2026年(令和7年分)の確定申告を念頭に、医師が絶対に知っておくべきポイントを網羅的に解説する。
勤務医の確定申告:やるべき理由と基本
勤務医の多くは「給与所得者だから確定申告は不要」と思っているが、これは誤りだ。次の条件に当てはまる勤務医は確定申告が必要または有益だ。
確定申告が必要なケース
- 給与収入が2,000万円を超える場合
- 複数の医療機関から給与を受けている場合
- 副業・アルバイト(当直・健診等)の収入が年20万円を超える場合
- 不動産収入・株式の売却益・配当収入がある場合
確定申告で取り戻せる税金(還付申告)
- 医療費控除(年間10万円超の医療費)
- ふるさと納税(ワンストップ特例以外の方)
- 住宅ローン控除(初年度は確定申告必須)
- iDeCo掛金の所得控除(給与所得者でも確定申告で申告可能)
- 寄付金控除
勤務医が活用すべき節税策トップ5
①iDeCo(個人型確定拠出年金)
勤務医がiDeCoに加入すると、掛金全額が所得控除になる。年間上限は勤務先の企業年金制度によって異なるが、医師の場合は月2.3万円(年27.6万円)が多い。所得税率が30〜40%なら年間8〜11万円の節税効果が生まれる。
②新NISA(少額投資非課税制度)
2024年から恒久化された新NISAは、投資利益が非課税になる制度。年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯投資枠1,800万円まで活用できる。高収入の医師ほど恩恵が大きい。
③ふるさと納税
所得に応じた上限額内でふるさと納税を行えば、2,000円の自己負担で地方産品を受け取りながら税額控除が受けられる。年収2,000万円の医師なら上限は約60〜70万円程度(住民税・所得税合算)。ワンストップ特例を使わない場合は確定申告が必要。
④特定支出控除
給与所得者が職務上の支出(学会参加費・専門書・資格取得費等)で給与所得控除額の1/2を超えた分を控除できる制度。高収入の医師は給与所得控除額が大きいため閾値が高いが、学会費・論文掲載費・海外学会の旅費なども対象になることがある。勤務先の証明書が必要。
⑤医療費控除・セルフメディケーション税制
年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた分が控除対象。家族全員分が合算できる。OTC医薬品の購入額が年12,000円超の場合は「セルフメディケーション税制」の適用も検討しよう。
開業医の確定申告:事業所得の申告と節税
開業医は事業所得の確定申告が必要で、経費の計上が節税の柱になる。
開業医が計上できる主な経費
| 費目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 人件費 | スタッフの給与・賞与・社会保険 | 家族への給与は「青色事業専従者給与」で控除可 |
| 減価償却費 | 医療機器・建物・車両等の償却 | 取得年度に一括計上か、定額法・定率法で償却 |
| 学術研修費 | 学会参加費・論文費・専門書 | 領収書を保管。業務関連性を明確に |
| 交際費 | 業務上の接待・会食 | 5,000円以下の会食は「会議費」として処理可能 |
| 共済掛金 | 小規模企業共済・経営セーフティ共済 | 小規模企業共済は掛金全額が所得控除に |
青色申告の活用
開業医は必ず青色申告を選択すべきだ。青色申告特別控除(65万円)に加え、赤字の3年間繰越控除、家族への給与の必要経費算入など、白色申告に比べて大幅に有利だ。
確定申告の提出方法と期限
- 期限:毎年2月16日〜3月15日(還付申告は1月1日から提出可能)
- e-Tax(電子申告):マイナンバーカード+スマートフォンで完結。控除額が10万円増(65万円→55万円の違いは青色申告の場合)
- 税務署への持参:1月末〜3月15日の期間中に提出
まとめ:医師の確定申告チェックリスト
- iDeCo・新NISAを最大限活用しているか
- ふるさと納税の上限額を使い切っているか
- 医療費控除の対象レシートを年間通して保管しているか
- 副業・バイト収入を正確に申告しているか
- 開業医なら青色申告・経費の適切な計上ができているか
確定申告は「義務」である前に「権利」だ。適切な控除を活用することで、合法的に手元に残るお金を最大化できる。不安な点は税理士(特に医師専門の税理士)への相談を強くお勧めする。


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