医師の収入は高い。しかしその分、「投資の失敗も規模が大きい」という現実がある。周りの医師・先輩から聞いた実例を匿名で集めてみると、驚くほど似たパターンに収束した。本記事では、医師が繰り返しやりがちな投資の失敗パターンを6つ紹介する。自分への戒めとして、そして同じ失敗をする医師を一人でも減らしたいという思いで書く。
📋 この記事でわかること
- 医師が陥りがちな投資失敗の6パターン(実例付き)
- 各パターンを防ぐための具体的な処方箋
- 「忙しい医師」でも実践できるシンプルな投資の原則
- 1人でも多くの医師に失敗を回避してほしいというメッセージ
失敗パターン①:「忙しいから」でほったらかし→詐欺・高コスト商品の被害
「先生は多忙だから、あとはお任せください」——この言葉が最も危険だ。知り合いの医師(消化器外科、40代)は、銀行の窓口で「老後の資産形成に」と勧められた投資信託を購入し続けた。10年後に確認したら、年率コスト3%以上の高コスト商品だった。同期間にS&P500インデックスを保有していた場合との差は400万円以上になっていた。
処方箋:コスト(信託報酬)は年率0.1〜0.2%以下の商品を選ぶ。銀行・証券会社の窓口で勧められる商品は手数料が高い傾向がある。ネット証券でインデックスファンドを自分で選ぶのが基本だ。
失敗パターン②:FX・仮想通貨でレバレッジをかけ過ぎる
医師はゲーム的な思考が得意な人が多い(手術の判断・戦略立案)。その性質がFX・仮想通貨のハイレバレッジに向かいやすい。研修医時代の先輩(放射線科、30代)は仮想通貨のFOMO(機会損失への恐怖)で2022年のピーク付近に1,000万円を一括投資し、6ヶ月で60%下落を経験した。「手術中も相場が気になって集中できなかった」と後に話していた。
処方箋:FX・仮想通貨は「余剰資金の5〜10%以内」という上限を設ける。レバレッジは実質1〜2倍程度に抑える。「手術中に気になる」なら資金を入れすぎている。
失敗パターン③:同僚・先輩の「儲かった話」に乗る
医師のコミュニティは狭い。「○○先生があの株で3倍になった」という話は瞬く間に広まる。しかし「○○先生が大損した」という話は広まらない。情報の非対称性だ。人は損失より利益を話したがる。医局の飲み会での投資話は「生存者バイアス」の温床だ。勝った話しか聞こえてこない構造になっている。
処方箋:「儲かった話」は半分に割り引く。紹介された銘柄を買う前に「なぜ上がると思うのか」「ダウンサイドは何か」を自分で検討する。他人の体験談は参考程度にとどめる。
失敗パターン④:節税目的で「事業投資」に踏み込む
高収入医師は節税に敏感だ。「医療法人」「プライベートカンパニー(マイクロ法人)」「農地投資」「民泊」——複雑な節税スキームが、知識のない状態で勧められることがある。開業医の知人は、税理士に勧められた「節税目的の航空機リース」に参加し、会社が倒産して出資金が全額回収不能になった事例がある。節税の恩恵より損失が大きかった。
処方箋:節税の前に「キャッシュフローがプラスか」「節税のためだけに複雑なスキームを組んでいないか」を確認する。節税目的の投資は「本業で稼ぐ力」を先に確認してから検討する。
失敗パターン⑤:「暴落=チャンス」で余剰資金を超えて購入
投資知識がついてくると、暴落時に「買い増しチャンス」と感じるようになる。これ自体は正しい感覚だ。しかし「生活防衛資金まで使って買い増す」のは別の話だ。2020年コロナショック時に、生活防衛資金を取り崩して株を買い増した医師が複数いた。その後相場が回復して利益を得た人もいるが、同じ時期に急な出費(転勤・車の故障・親の介護)が重なって生活が苦しくなった人もいた。
処方箋:暴落時の買い増し資金は「予め積み立てておいたキャッシュ」から。生活防衛資金・日常の生活費は絶対に投資に入れない。
失敗パターン⑥:退職後の「口座整理」を先送りする
現役世代には関係ないと思いがちだが、意外に多いパターンだ。iDeCo・NISA・特定口座・企業型DC——気づくと管理先が5〜6社になっており、退職時・相続時に本人も家族も困る。
処方箋:証券口座は2〜3社に集約する。メイン口座(NISA・iDeCo)、サテライト口座(個別株・ETF)程度に整理しておく。
失敗パターン共通の「処方箋」
- コストを見る:信託報酬0.2%以下のインデックスファンドを基本にする
- ルールを作る:「NISA枠は売らない」「レバレッジは2倍以下」など事前にルール化
- 相談先を持つ:バックコミッション(販売手数料)のない独立系FPに相談する
- シンプルに保つ:複雑な商品ほど手数料が隠れている
まとめ:今日からできること
6つの失敗パターンを振り返ると、根本には「忙しさ」「コミュニティの情報バイアス」「節税への焦り」がある。忙しい医師だからこそ、シンプルで低コストな仕組みに乗っかることが最大の防衛策になる。
- 信託報酬0.2%以下のインデックスファンドをNISA口座で積み立てる
- 生活防衛資金(生活費6ヶ月分)は投資に回さない
- 年1回、独立系FPに相談してポートフォリオを点検する
この3点を守るだけで、上記の失敗パターンの8割は防げる。難しいことは何もない。まずは1つ目から始めてみよう。


コメント