ゴルフを始めたばかりの人も、何年もラウンドしているベテランも、「コース上のマナー」は意外と曖昧なまま続けている人が多いです。
脳外科医として10年以上ゴルフをやってきて、接待ゴルフも数えきれないほど経験しました。その中で気づいたのは、マナーが悪い人の多くは「悪意がない」ということです。知らないだけ、気づいていないだけ。
この記事では、コース上(ティーイングエリア〜グリーン)で実際によく見る「やってはいけない行動」を、なぜNGなのか・正解は何かをセットで解説します。
この記事はゴルフマナー3部作のPart1です。
- Part1:コース上のマナー編(本記事)
- Part2:接待ゴルフの気配り編
- Part3:接待ゴルフ完全攻略編(前日〜当日〜お礼まで)
📋 この記事でわかること
- ティーイングエリアでのNG行動と正解
- フェアウェイ・ラフでのマナー(ディボット・バンカー)
- グリーン上でやってはいけないこと
- スロープレーを防ぐ具体的な方法
- なぜマナーがその人の「人間性」を映すのか
ゴルフマナーはなぜ重要なのか
まず前提として話しておきたいことがあります。
ゴルフのマナーは「ルール」と「エチケット」に分かれます。ルールは違反するとペナルティになるもの。エチケットはペナルティにはなりませんが、同伴者・後続組・コースに対する敬意の表し方です。
脳外科医として手術室で働いていると、細部の丁寧さが結果に直結することを日々実感します。ゴルフも同じで、マナーの良さはその人の仕事への姿勢と重なります。接待ゴルフで「この人と仕事したい」と思われるかどうかは、スコアより先にマナーで決まります。
ティーイングエリアのマナー
① 打つ順番を守らない
ゴルフには「オナー(honor)」という概念があります。前のホールでスコアが最もよかった人が最初に打つ権利を持ちます。1番ホールではじゃんけんやくじで決めることが多いですが、2ホール目以降はきちんとオナーを守るのが正式なマナーです。
接待ゴルフでは、招待された側がオナーになることを「先に打ってください」と促す場面もあります。この気遣いができるかどうかは、相手に伝わります。
正解:オナーを把握して、自分の番まで静かに待つ。接待ゴルフでは招待側が「先にどうぞ」と促す気遣いを忘れずに。
② 人が打つときに視界・音で邪魔する
これが一番多い。バックスイング中に声をかける、打線上に立つ、カートをガチャガチャ動かす——悪気はないのはわかりますが、集中が切れます。
脳外科的に言えば、集中状態(フロー状態)は外部刺激で簡単に崩れます。特に初心者や緊張しやすいプレーヤーにとって、バックスイング中の音や動きは致命的です。
正解:同伴者がアドレスに入ったら完全に静止する。カートの操作・会話・移動はすべてショット後まで待つ。立ち位置は打線上・正面は避け、斜め後方に立つ。
③ 練習スイングで芝を削る
ティーイングエリアで素振りをするとき、思い切りダウンスイングをして芝を削る人がいます。ティーイングエリアの芝は全員が使う場所です。
正解:素振りは芝を傷めない「空振り」で行う。どうしても感触を確認したいなら、ティーイングエリア外の芝(後方の芝部分)で行う。
フェアウェイ・ラフでのマナー
④ ディボット(芝の削れ跡)を直さない
アイアンやウェッジでショットをすると、フェアウェイの芝が削れます。この削れ跡を「ディボット」といいます。
ディボットを放置すると:
- 後続のプレーヤーのボールがそこに入ったとき、不公平なライになる
- 芝の回復が遅れ、コースの状態が悪化する
- コースへの敬意がないと見られる
特に、自分がラフからショットして大きくディボットができた場合は必ず補修してください。「誰も見ていないからいいか」という感覚が出るのがゴルフです。でもキャディさんは必ず見ています。
正解:削れた芝(ディボット)を元の穴に戻す。芝がなくなった場合は、カートに積んであるディボットエントリー(砂と種が入ったボトル)を穴に入れる。これをセットで行う。
⑤ バンカーをならさない
バンカー(砂地のハザード)から脱出したあと、砂をならさずにそのまま立ち去る人がいます。
バンカーをならさないことで起きる問題:
- 後続のプレーヤーが足跡の中にボールが入り、正常なライで打てない
- 砂が固まったまま残り、ショットの難易度が上がる
- コースのメンテナンス担当者の負担が増える
バンカーの出入りにもルールがあります。基本的には傾斜が緩やかな場所(バンカーの縁が低い場所)から出入りします。急斜面から飛び降りると砂が崩れ、ならすのが大変になります。
正解:バンカーから出たあと、レーキ(熊手状の道具)で自分の足跡とショット跡をすべてならす。レーキはバンカーの外の芝の上に置く(バンカー内に残さない)。出入りは傾斜が緩い場所から。
⑥ カート道路をショートカットしてフェアウェイを歩く
「近道だから」とカート道を外れてフェアウェイを横断したり、ラフを踏み荒らして歩く人がいます。コースによってはフェアウェイへの立ち入りが制限されている場合もあります。
正解:カート道は必ずカート道を使う。自分のボールの近くまでカートで行き、必要なクラブを持ってボールに向かう。フェアウェイを横断する際も、コースのルールに従う。
⑦ ボール探しに時間をかけすぎる
ゴルフルール上、ボールの捜索時間は3分以内と定められています(2019年のルール改正から)。以前は5分でしたが短縮されました。
「もう少しで見つかりそう」という気持ちはわかりますが、後続の組を待たせることになります。特に接待ゴルフでは、スロープレーの原因になるボール探しは最大の失礼の一つです。
正解:ボールが曲がったと思ったら暫定球(プロビジョナルボール)を宣言して打っておく。「暫定球を打ちます」と同伴者に宣言してから打つ。もし元のボールが見つかれば暫定球は不要になる。3分以内に見つからなければペナルティを受け入れて進行を優先する。
グリーン上のマナー
グリーン上は最もデリケートな場所です。芝の状態がパットの成否を直接左右するため、マナー違反が最も結果に影響します。
⑧ グリーン上を走る・引きずり歩きをする
グリーンは非常に繊細な芝(bentgrass など)で覆われています。走ったり、スパイクを引きずったりすると:
- スパイクマーク(芝の傷)がつき、他のプレーヤーのパットラインに影響する
- 芝が踏み固められ、転がりが変わる
- グリーンキーパーの修復コストが増える
正解:グリーン上は常に歩く。歩き方も「かかとから着地しない」よう意識する(スパイクの跡がつきにくい)。急ぎたくても小走り程度にとどめる。
⑨ 同伴者のパットラインを踏む
パットライン(ボールとカップを結んだ線)を踏むことは、最も基本的なマナー違反の一つです。芝が踏まれると、ボールの転がりが変わります。
これをやってしまう人の多くは、グリーン上で自分のボールのことしか考えていません。他のプレーヤーのボール位置とカップの位置を常に頭に入れて移動する習慣をつけましょう。
正解:グリーンに上がったら、全員のボール位置とカップを確認する。移動の際はパットラインをまたぐか、大きく迂回する。「間違えてしまったかも」と思ったら「すみません、踏んでしまいましたか?」と確認するのが誠実な対応。
⑩ ボールマークを直さない
グリーンにボールが落下すると、芝に小さなへこみ(ボールマーク・ピッチマーク)ができます。これを放置すると:
- そのへこみがパットラインに影響し、ボールが跳ねたりする
- 芝の回復に時間がかかり(放置すると数週間)、グリーンの状態が悪化する
- 修復すると翌日には目立たなくなる
正解:自分のボールマークは必ず修復する。グリーンフォーク(修復ツール)をバッグに入れておく。修復方法は「周囲の芝を中央に向けて押し込む」ように数か所差し込んで持ち上げる(穴を埋めるように)。パターのグリップ端でも代用できる。
⑪ 抜いたピンをグリーン上に置く
グリーン上でピンを抜いた後、グリーン内に雑に置く人がいます。ピンが倒れてグリーン面を傷つけること、他のプレーヤーのパットラインに干渉することがあります。
正解:抜いたピンはグリーン外(エプロンやカラーの芝)に横にして置く。誰かに持ってもらう場合は、影がパットラインに落ちない位置に立ってもらう。
⑫ 他の人がパットする前に移動を始める
自分のパットが終わると、次のホールに向けてカートへ向かい始める人がいます。同伴者がまだパットしている最中に動き回ることは、集中を妨げます。
正解:全員がホールアウトするまでグリーン上(またはその近く)に留まる。最後の人がカップインしてから移動を始める。スコアを書くのもグリーンを離れてから(次のホールのティーイングエリア付近で)。
スロープレーを防ぐための具体的な習慣
スロープレーはコース上の最大のマナー違反です。後続の組を長時間待たせることは、コース運営にも影響します。
スロープレーにならないための習慣をリストにしました:
- 自分の番が来る前にクラブを選んでおく(前の人が打っている間に距離を計算する)
- カートから降りたら2本以上クラブを持っていく(打ってみないとわからない場面は2本持参)
- 素振りは1回まで(2〜3回の素振りはテンポを崩す)
- ボールを探しながら同伴者のボールも一緒に探す
- グリーン上では自分の番が来る前にラインを読んでおく
- スコアカードはグリーンを離れてから記入する
「自分はスロープレーではない」と思っている人でも、意識して時計を確認してみると驚くことがあります。1ラウンド18ホールで、4時間〜4時間半が標準的なペースです。これを超えていたら何かで時間を使いすぎています。
まとめ|コース上のマナーはその人の「当たり前」が出る
脳外科医として手術室で感じることと同じですが、コース上のマナーは「やろうと思えばできる」ことばかりです。難しい技術は一切不要。
でも意外とできていない。なぜかというと、自分のことで頭がいっぱいになるからです。次のショット、スコア、外したパット——そこに集中しすぎると、周囲への配慮が後回しになります。
「自分以外の全員が気持ちよくラウンドできているか」を常に意識する。これだけで、コース上のマナーの9割はカバーできます。
Part2では、接待ゴルフ特有の「気配りと人間関係のマナー」を解説します。
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